日本生殖心理学会 パンデミック対処委員会よりの提言: 2
生殖医療従事者の皆様へ
カウンセラーからの“コロナ不安”を訴える患者対応のコツ
- 「コロナ不安」を否定しない
- できることをできるだけ幅広く提示する
- スタッフのメンタルヘルスも大切にする
新型コロナ感染症は未知の感染症ですから、誰にもこれからどうなるかはわからないのです。このような状況で不安になるのは異常なことではありません。不安を訴える患者には、安心させようとつい「そんなことを考えなくていい」とか「心配しすぎですよ」と言いたくなりますが、まずは「ご心配ですよね」とか「このような状況では不安を感じられるのは当然のことです」と不安を受けとめる応答を心がけましょう。
また、「前向きに考えましょう」と励ましたくなるかもしれませんが、それも不安を受けとめたうえでの励ましの方が効果的です。「考えてもしょうがないから」というメッセージを送らないように、「不安な中、自分のこれからを一生懸命考えようとしておられることはとても素晴らしいことですよ」と伝えてみてはどうでしょうか。
日本生殖医学会の勧告を「治療してはいけない」と解釈している患者も多くいます。施設の方針をきちんと明示することがまずは大切です。治療を変わらず行うのか、移植はせずに採卵のみを勧めるのか、患者にわかりやすく施設の方針を示しましょう。
リスクを軽視し妊娠を懇願する患者も対応が難しいと思いますが、「焦らないで」というよりは「焦ると思うけれど、受精卵(施設によっては卵子)の凍結をしておくことで現在の妊娠可能性を温存しておくことができるのですが、それはあなたの不安を少し減らすことにつながりますか ?」といった焦りを認めて選択肢を丁寧に示す対応が患者に受け入れられやすいかもしれません。
また、非常事態ではありますので、自施設で行っていなくても他施設でできることを患者が希望する場合には、そのような情報提供も誠実な態度といえるでしょう。
感染のリスクに過敏になることはもちろん、ある意味で「不要不急」の医療とされてしまいがちな生殖医療は、この状況で患者数の減少が危惧され、医院の経営不安も現実的問題としてのしかかっておられるのではないでしょうか。経営を担う施設長のストレスも大きくなりますし、雇用されているスタッフも今後に不安を抱いているかもしれません。スタッフ自身のメンタルヘルスはつい後回しにされがちですが、意識して健康を保つよう皆で配慮しましょう。